このたび、わたくし吉開菜央はAI KOWADA GALLERYで個展を開催いたします。テーマは「呼吸」。上映作品は、第19回文化庁メディア芸術祭で新人賞を受賞した、映画『ほったまるびより』や本展初公開の新作『静坐社』を含む、全四作品(約60分)をオムニバス形式にて上映いたします。
上映プログラム一覧
Some rules in the morning/3分26秒/2011
I want to go out/6分55秒/2014
ほったまるびより/37分11秒/2015
静坐社-Breathing House-/12分12秒/2017
上映時間 14:00-/15:00-/16:00-/17:00-(上映の途中でもご入場いただけます)
会期中 シンポジウム 「映像と身体」
日程 : 12/24(日)15:00 – 17:00
会場 : 3331ArtsChiyoda1F「ラウンジ」
パネリスト : 吉開菜央(ダンサー・映像作家)
OJUN(美術家・東京藝術大学絵画科油画 教授)
桂英史(メディア論研究者・東京藝大映像研究科教授)
関かおり(振付家・ダンサー、関かおりPUNCTUMUN主宰)
進行役: 山内宏泰(ライター)
入場料: 1000円(ご予約不要、当日直接会場までおこしください )
新作『静坐社』について
2016年、3月。ある重要な家が取り壊されるので、映像として記録に収めてほしいという依頼を受け、わたしは京都に向かいました。その家は大正時代に流行した健康法「岡田式静坐法」を京都で広めていた歴史の深い場所なのだそうです。わたしが静坐社に着いたころにはもう引っ越し作業真っただ中で、これまでこの家に住んできた4世代分の人々の物で溢れかえっていました。引っ越し作業を手伝う傍、わたしはその家を撮り始めました。窓から入る陽の光、書物、手紙、写真、家の周りを通り過ぎる人々の生活音、家具につもったほこり、蜘蛛の巣。これらのものが全部合わさって、古いひとつの家がありました。
「岡田式静坐法」というのは、岡田虎二郎氏が発案した、呼吸を整えながら30分間静坐するというヨガや座禅に近い健康法です。ヨガも、座禅も、静坐も、その時間を過ごす上でどう呼吸するかが非常に重要になってきます。呼吸は、唯一人間が自分の意思でコントロールすることができる身体内部の働きです。静かに座ることで、みえてくるもの、きこえてくるものはなんなのか。はたしてそれで人は救われるのか。静坐社に残っていたメモをみて、わたしは改めて、古くから人が平穏な精神を求めて試行錯誤をしてきた歴史を、とても尊く感じました。
こうしたやり方で作品を制作したのは初めてのことですが、現実にあった出来事に向き合って、私なりのやり方でそれをまた編集しなおして、この作品は生まれました。いうなれば静坐社にまつわる呼吸ファンタジー、といえるでしょうか。
振り返ってみれば、過去のわたしの作品には「お腹」と「呼吸」というモチーフが繰り返し出てきたことに気づきました。それは体力がありそうに、健康そうにみえて実は割と打たれ弱い自分の身体を、作品制作を通じて鼓舞してきたような、生まれ持ったこの身体でもってこの世に折り合いをつけるために、撮影し、編集し、からだにまつわる物語を生み出すことで発見したことが作品になっているのからなのかもしれません。全てのからだの動きは、呼吸とともにあり、そのからだから生まれてくる情動のようなもの、を感じていただければと思います。
今回、このような個展の機会をくださった小和田愛さんに感謝するとともに、この上映展示を通じて、多くの方にお会いできることを楽しみにしています。